ラブホと浣腸液と水族館


 3月7日のこと。

 私を含めた友達3人で水族館へ遊びに行った。

 水族館へは片道1時間ばかりのドライブだが、その前にお昼に待ち合わせてパンケーキで腹ごしらえをした。私は性根から喪所であるため、お洒落な空間に入るとそわそわして挙動に走りがちだ。パンケーキ、という案が出たときは動揺したが、甘党の友人が瞳を煌めかせているところに陰りをさしたくなかった。せめてもの抵抗で「なんでもいいよ」と答えた。完全なる同意には至れなかったのだ。

 休日のお昼のパンケーキ屋は当然込み合っていたが、15分ほどで席に案内された。「隅の席だ。やった!」

 こういう店だと店員さんを呼んで注文を頼むのも緊張してしまうが、今回の店員さんは驚くほど人当たりが良くて、かたくなな喪女の心を溶かしてくれた。ありがとう。

 実は2度目の来店だったためパンケーキ自体には新しい感動は生まれなかったが、ぶなんに美味しかった。メープルの甘みと上質なバターの香りを存分に堪能できた。今度来るときはしょっぱいやつを頼みたいな。

 

 腹が満たされてからは水族館までドライブだ。友人の8人乗りの黒いアルファードで後部座席を広々と堪能させてもらい、コンビニで買ったワインを飲みながら田舎道を眺める。明らかに明らかにラブホテルが多い。やはり田舎だと娯楽が少ないからセックスに興じるしかないのだろうか…。そういえば、ワインを買ったコンビニのトイレに浣腸液が置き去りにされていたな。腐女子の血が騒ぎ脊髄反射でアナルセックスの事前処理が脳裏をよぎったが、あながち外れでもないかもしれない。

 

 そんなこんなで水族館にたどり着いた。コロナの影響か、館内は空いていたと思う。私たちと同じような大学生らしい出で立ちの若者がちらほらと見受けられたくらいだ。皆、外出を自粛しつつも精いっぱい春休みを謳歌しようとしているのだろうか。切ない。

 10年ぶりくらいに訪れる水族館で、一番の楽しみはシロクマだ。私は普段から鞄にシロクマのキーホルダーを付けているくらいにはあの巨大な白いモフモフを愛しているので、わくわくしながら対面を臨んだ。館内の案内通りに一通りの魚を見学した後、ようやくシロクマの姿を目にすることができた。

 シロクマは館内の外の飼育場で、低いうなり声をあげていた。遠目からでもその巨体っぷりが伝わってくる。そしてあんまり白くない。私の脳内のシロクマは映画『すみっコぐらし』のイメージが強かったため、実物を前にするとその力強さに慄いた。柵から身を乗り出して落ちようものなら寸分違わず阿鼻叫喚ショーが始まりそうだ。流石は北の大地の帝王。しばらく見惚れてしまった。

 

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(ピンの映りが良くなかったためネットから拝借)

 

 閉館時間ギリギリにGAOを出た後、海辺へ向かった。友達の一人がヒールの高いパンプスでゴツゴツと岩場を闊歩している姿をみて感心した。

 

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 海に沈みゆく夕日と、まるで怪物の姿を彷彿とさせるように積み重なった岩石は、同じ景色に収まることで、美しさを際立たせながらも背徳的な不気味さを訴えかけてきた。感傷的な気持ちと無視できない程度に微かな恐怖心を胸中に、しばらく佇んだ。

 

 その後、友人の家で酒を飲みながら『JOKERE』『エスター』『闇金ウシジマくん』を鑑賞した。こういうラインナップが好きなのだ。映画を好き勝手に批評しているうちに自堕落に寝落ちした。

    翌日の昼に起床し、朝昼兼食で『しゃぶ葉』へ行った。女子がそろっているのに、野菜を一切投下しない肉鍋を食べ続けた。女子力は一日にしてならず。こういうところから改善して自分磨きをしなきゃならんのだろうけど、好みとめんどくささが勝ってしまった。

 

 普段は引きこもって病んでばかりいるが、大学生らしい日常を過ごすことができた。外へ連れ出してくれる数少ない友達がいることに感謝しよう。